元々の所有者はセン・メリルさんと、その夫であり数多くのシグマカメラに搭載されているFoveonセンサーの開発技術者、故ディック・メリルさんでした。きっかけは10年前、私ならSD14を使って何か記憶に残るような写真を撮影できる、とセンさんが直々に貸してくれたのです。彼女が期待をかけてくれたことを光栄に思いますし、とても感謝しています。
ポートレートやイベントなどの仕事でさまざまなカメラを使用していましたが、初めてSIGMAのカメラのサンプル画像を見たとき、鮮明さとシャープさにおいて特別なものを感じました。綺麗なポートレートや美しい景色を撮るのに飽きたことは一度もありませんが、実際にSD14を使ってみると、特別な写真には何かしらムードやミステリーのようなものが潜んでいる、と気づいたのです。それからは、「本の挿絵のように、見る人が背後に物語の存在を感じるような写真」を意識して撮るようにしています。
SIGMAのカメラを使い始めた10年前は、ちょうどデジタルカメラの黎明期。目まぐるしく機材もワークフローも変わっていく中で、SD14は私を初心に返らせ、スローダウンさせてくれたのが嬉しかったです。このカメラを使って構図を決めたり、RAW現像したりする作業は、まるでまたフイルムでの撮影に戻ったような気持ちでした。
数多くのデジタルカメラのブランドがあり、その都度仕事に最適なツールを選択していますが、なかでもSIGMA SD14とそのRAWデータはやはりユニークなものです。使いこなすのには熟練が必要ですが、それをマスターすれば、撮影者に必ず応えてくれる。そういったSIGMAカメラの背後にある哲学は、間違いなくすべてのビジュアルアーティストが学ぶべきものだと思います。