海外カメラショーでのブースと山木道広。

Photokina Memories Photokinaへの思い

2018.09.26

2018年9月26日から世界最大の写真・映像関連展示会である「Photokina 2018」がドイツ・ケルンで開催される。1950年から隔年で開催されてきたPhotokinaは、今年で実に35回目を迎える。

今回は、これまでと比較しても特別なものになるはずだ。理由の一つは、複数の参加企業からフルフレーム・ミラーレスカメラ用の新システムなどの新たな提案がなされ、写真・映像業界の変化が顕著になることだろう。が、それ以上に大きなインパクトとなるのが会期の変更だ。これまで隔年9月の開催だったものが、2019年からは毎年5月に開催されるようになり、今年はその「端境」となるわけだ。Photokinaでのさまざまな出来事が、秋のケルンの景色や気候とセットの思い出となっている私にとっても、何とも感慨深いものがある。同様の思いをもつ業界関係者は多いことだろう。

当社がPhotokinaに初参加したのは1972年のこと。もちろん、私が入社するずっと前の話だ。当時はまだ業界の極小企業の一つに過ぎなかった当社にとって、Photokinaのように経費のかかる国際見本市への参加は随分と分不相応だったようだ。

しかし、創業者である山木道広は「Photokinaに毎回参加できること=それだけの企業規模と資金を確保すること」を指標として、SIGMAを世界中のお客様から支持されるブランドに成長させることを目指した。以来半世紀にわたり、厳しい時期はありながらも、皆様のご支持のおかげでどうにか毎回参加を継続できている。

初参加の年、当社ブースはカウンター一つだけの非常に簡素なものだったそうだ。日本からは山木道広を含む2名のみ。そこに現地で雇用したアルバイトの若いドイツ人女性を加えた3名でブースに立ったという。当時のPhotokinaは現在と違い「実際の注文を取る真剣勝負のビジネスの場」であったので、それこそ3名は朝から晩まで遮二無二働き、会社と製品のアピールを繰り返した。会期終了時に、その若いドイツ人女性が感極まって大粒の涙を流したことが忘れられない、と山木は生前、ことあるごとに口にしていた。

2018年の今、業界も刻々と変化するし、Photokinaもまた変わっていくだろう。が、当社のみならず、現在の業界を築き上げてきた先人たちの思いだけはしっかりと引き継いでいきたいと気持ちを新たにしている。

(文/山木和人 シグマ代表取締役社長)

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