A Dry Cleaner’s 『手仕事のぬくもり』

Winter/2015

2014年夏、懇意にしていた東京都狛江市のクリーニング店がひっそりと店を閉められた。現在では珍しい部類に入るであろう、工場取次店ではない、店舗でクリーニングを行うお店だった。社会人になってからは季節毎にスーツやジャケット、ニットなどをまとめてお願いしていたので、かれこれ20年以上のお付き合いだったことになる。狛江を離れてからも、季節の変わり目には大量の服を車に積んでは店頭へ通っていた。

決して愛想が良いとは言えなかった店主の仕事は、とにかく丁寧のひとこと。翌シーズンにパッケージを開封するたび、洋服一枚一枚の扱いに店主の細やかな心遣いが垣間見え、何とも言えない温かさを感じたものだ。何よりその仕事に絶対の信頼を置いていたし、それはそのまま自分の仕事における目標にもなった。

当社が手がけているのは手作りの工芸品ではなく、あくまでも工業製品である。けれどもその製品を通して、作り手であるエンジニアの志や、会津の人々の心といったものを、どこかに感じていただけたらと日々考えている。

最先端の技術と、手仕事のぬくもり。この融合を何とか実現したいと思っている。

着る人と衣服のすべてを知り尽くしたかのような仕上がり。クリーニングというよりメンテナンスと呼びたいほど、店主の手仕事を信頼していた。

(文/山木和人 シグマ代表取締役社長)

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