フォトヒロノブ

ネパール逍遥

2019.04.03

「観光」という言葉には、なぜ「光」が入っているのだろう。

前から不思議に思っていた。

物の本で調べてみると、『周易』にその由来があるという。儒学の経典として『易経』とも呼ばれる。周王朝の時代であるから、この書物ができたのは、ざっと二千数百年前である。
 

そのなかに「觀國之光 利用賓于王」という一節がある。書き下すと「国の光を観る、用て王に賓たるに利あり」となる。パッと読んでもわけがわからない。私なりに翻訳すれば、

「ある国の光をよく観て、よく知ることに努めれば、その国の王に重く用いられることができる」

といったところだろうか。

だが、けっきょく、「光」とはなにかが、わからない。

Canon EOS 80D+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f 7.1 1/500秒 JPG

ネパールへ、行った。

Canon EOS 80D+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f6.3 1/500秒 JPG

写真は、「感光」によって生まれる。照射を受けたセンサに発生した電荷が画像をつくリ出す。これは物理的な「光」である。

Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f5.6 1/160秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f2.8 1/3200秒 JPG
Canon EOS 80D+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f 7.1 1/500秒 JPG

私は、カトマンズで、ヒマラヤで、撮像素子を感光させる。

Canon EOS 80D+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f8 1/320秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f4 1/140秒 JPG
Canon EOS 80D+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f 7.1 1/500秒 JPG
Canon EOS 80D+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f 6.3 1/500秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art f9 1/400秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f4.5 1/160秒 JPG
×

ネパールの人は私が山を見ていると、「ヒマール…」と、教えてくれるように、しかし、独りごとのように言う。だが、私が峰のひとつを指差して、あの山はなんという名前ですか、と訊くと、知らない、と答えが返る。

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Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f9 1/400秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f2.8 1/50秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art f8 1/250秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f2.8 1/80秒 JPG
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もちろん、山の名前はそれぞれにあることだろう。しかしそれを名前であつかわないことは、名前のない感情があることなのだ。意味を求めず、神を求める眼があることなのだ。

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Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f9 1/320秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f2.8 1/60秒 JPG
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私は、カメラを提げて、ただネパールを逍遥する、つまりそぞろ歩くだけの者であった。だが、ネパールの人は、レンズの向こうにある私の目を、まっすぐ見てくれる。

「眼光」という言葉があるが、眼が光を放つわけではない。その奥にあるなにかが輝きを放つとき、私たちはそれを光と呼ぶ。

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Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f9 1/800秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art f6.3 1/160秒 JPG
Canon EOS 6D MarkII+SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary f7.1 1/320秒 JPG

はじめの疑問に戻ろう。観光の「光」とは、なんだろう。

それは物理的な光ではない。

目に見えるものは情報である。網膜に映るものも、撮像素子に写るものも、情報である。

私たちがある場所へ行き、ある人に会うとき、私たちは情報をほんのすこしの手がかりにして、その奥にある輝きを捉えようとしているのだ。

ひとり逍遥していただけの私は、やがてカトマンズで仲間と落ち合い、共通の課題に向かって山を登ることになる。旅は、トラベルからジャーニーへと変化してゆく。次回もネパールの話を続けよう。

田中 泰延

1969年大阪生まれ。株式会社 電通でコピーライターとして24年間勤務ののち、2016年に退職。「青年失業家」を名乗り活動を始める。「街角のクリエイティブ」での映画評論「田中泰延のエンタメ新党」は200万ページビューを超える連載となる。2019年6月12日に初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。Twitter:@hironobutnk

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