[ SIGMAで写真を楽しむ人の、とっておきのフォトファイル ]

“得体の知れない魔物”の
力を借りて世界を撮る。

トモ・コスガさんアート・プロデューサー

カメラマニアの祖父と父を持った私は中学に上がる頃には写真を撮り始め、一眼レフ、二眼レフ、ポラロイド、中判カメラ等々、一通りのフィルムカメラに触れたのち、2000年前後からデジカメで撮り始めました。SIGMAのレンズは父からの勧めだったと思います。当時愛用していたCanon EOS 10D につけて使ってみると、レンズ描写の切れ味がナイフの様に鋭く、また幽玄味のあるトーンが出たことに驚きました。使いこなすうち、アンダー気味に撮影し、現像作業時に少し明るく持ち上げて乗るノイズも含めて自分の好みだと分かりました。

今使っているレンズは、スナップは「SIGMA 18-125mm F3.5-5.6 DC」(10年ほど)、接写撮影は「SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG」(5年ほど)です。とくに、スナップでSIGMAレンズを使うのは、世界をそのままに切り取るのではなく、少し意地悪に切り取ってやろうという時でしょうか。SIGMA製品の描写は、露出アンダーの領域に“得体の知れない魔物”が潜んでいると思うんですよね。その魔物の力を借りて世界を撮る。少しアンダー気味に。そうして仕上がった写真というのはどことなくユーモアを持ち合わせているように思います。

SIGMAというブランドのイメージは、「破壊と創造のSIGMA」。Foveon(フォビオン)にしてもカメラの形状にしても、いわゆる一般的なカメラの在り方を根底から覆す世界観がある。カメラの歴史は200年程ですし、デジタルカメラに至ってはわずか50年の歴史ですから、これからも写真表現のポテンシャルを引き上げるようなカメラとレンズ、そしてセンサーを開発してもらいたいです。

トモ・コスガ

アート・プロデューサー

2012年に没した深瀬昌久の展覧会や出版物の企画を手がける。アート・プロデューサーとして写真分野を中心に展覧会キュレーションや執筆を行う。手がけた展覧会に、深瀬昌久展「遊戯 PLAY」(KYOTOGRAPHIE、2018年)深瀬昌久展「L’incurable Égoïste」(アルル国際写真祭、2017年)、ロジャー・バレン&アスガー・カールセン展「NO JOKE」(Diesel Art Gallery、2017年)、深瀬昌久展「救いようのないエゴイスト」(Diesel Art Gallery、2015年)など多数。深瀬昌久が生涯にわたって制作した40年間分の作品群を網羅する写真集『MASAHISA FUKASE』(赤々舎、2018年9月発刊)の監修・本文を務めた。SIGMA DPユーザーでもある。

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