The Source of Motivation モチベーションの源

Spring/2016

もう15年くらい前のことになると思う。友人たちと連れ立って、青山のブルーノート東京へインコグニートのライブを観に行った。

インコグニートは、いわゆるアシッドジャズ・ムーブメントの黎明期から活躍するジャズファンク・ソウルバンドだ。その楽曲の、グルーブ感がありながらメロディが豊かで、なおかつキャリアを通して独特の上品さが漂うところが好きで、ずっとお気に入りのバンドの一つになっている。特に『Beneath The Surface』に収められている“ A Shade of Blue”はお気に入りの曲で、仕事を終えてからの帰宅途中の夜道などで聴くと、メロウなメロディが本当に心に沁み、最高の時間が過ごせる。

そのライブのアンコールで、リーダーであるジャン=ポール‘ブルーイ’モニックが再登場した際に、次のようなことを言っていたことが印象に残っている。

「僕たちは世界中の国をライブのために旅して回っている。旅自体はエキサイティングだけれど、毎日毎日同じ曲を同じ順序で演奏することは簡単なことじゃない。モチベーションを維持するのが難しくなる時もあるんだ。でも、そんな時でも、今日のようなお客さんからの声援を聞くと、“よしやってやろう!”って気になるんだ。だから、皆さんに心からお礼を言いたい」

私たちの仕事も、時には瞬発力で追い込むことも必要とされるが、ほとんどの場合、テンションを一定に保ち続けることの方が難しい。しかし、製品を作っていて一番やりがいを感じ、モチベーションの源となるのは、やはりお客様から良いご評価をいただいた時だ。ブルーイのあの時の気持ちは、今になって尚更よく理解できる。

(文/山木和人 シグマ代表取締役社長)

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