The Adventures of Sherlock Holmes 志と熱意―『シャーロック・ホームズの冒険』

Early Summer/2015

リーズもののTVドラマはほとんど見ないが、このグラナダTV制作の『シャーロック・ホームズの冒険』だけは別だ。数あるホームズものでも名作の誉れ高く、80〜90年代にかけて、毎週の放送が心から楽しみだった。

主演のジェレミー・ブレットは間違いなく、史上最高のホームズだ。そう断言させるだけの、圧倒的な存在感と演技力を見せている。ワトスンなどのキャストももちろんだが、何より、19世紀のイギリスを再現した街並み、小道具、衣装等々が本当に素晴らしい。ストーリーだけでなく、ドラマの一場面一場面でうっとりできる、一粒で何度も美味しい傑作だ。

このクオリティには、予算の規模だけではなく、キャストやスタッフ一人ひとりの高い志と熱い気持ちが大きく影響しているのだろう。古典とは、時を経ても色あせず人の眼に応え、解題に堪えうる普遍的な価値を持つものだと思うが、それは作り手の情熱と技量の投影によって生み出されるのだと思わずにいられない。

翻って、当社の作品(製品)の一つひとつに込めた私たちの志と熱意はどうか。それらはユーザーさんに伝わっているだろうか。日々の製造と開発を通して、ふとそんなことを考えたりもする

英国グラナダTV制作、1984〜94年放映(日本での初回放映は1985〜95年)。コナン・ドイルの原作とその時代背景を見事に再現し、熱狂的なファンを生んだが、「最高のホームズ役者」と呼ばれた主演のジェレミー・ブレットの死により、全話のドラマ化に至らなかった。

(文/山木和人 シグマ代表取締役社長)

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