Inspirational lessons from my mentors 恩師の教え

Autumn/2015

にとってのメンター(指導者)が誰かと言われれば、やはり当社の創業者であり、父であった山木道広になるだろう。経営者としての気構え、哲学、覚悟、行動等々、さまざまなかたちで決定的な影響を受けている。

実は、私にはもう一人多大な影響を受けた恩師がいる。上智大学時代に指導いただいた故 奥田健二先生だ。奥田先生は経営学の研究者となる前にビジネスマンとして定年まで企業で勤め上げられたので、実社会、実務に根ざした経営理論を展開されており、本当に多くのことを学んだ。私が家業を継ごうとしていることを知ると、「卒業後はすぐにお父さんの会社に入って、現場の人と一緒に仕事しなさい。どこかの大企業を経由して役職付きで会社に入ったら、誰も君に協力してくれないよ」という貴重な助言もいただいた。教えに従って新卒で入社し、多様な部門で経験を積んだことは今の自分の仕事観・現場観に大きく影響している。

『ジャパニーズ・ワーク・ウエイの経営学』は奥田先生最後の著作であり、研究成果の集大成とも言える内容だ。先生はこの著作で「日本社会のストロングポイントとしてのジャパニーズ・ワーク・ウエイの長所を自己認識せよ」と提言されている。「ジャパニーズ・ワーク・ウエイ」とは、経営陣(表層に生きる人々)が働く人々(基層を担う人々)の主体性を認め、相補性的関係を作ることであり、仕事を進めるために複数の人々が協力する仕組みおよび精神姿勢のことと定義されている。一見単純に聞こえるが、実に奥深い至言だ。経営者としてチャレンジを続けていくうえで、20年以上前のこの教えを常に心にとどめておこうと肝に銘じている。

「経営学は実践に根ざしているべき」を旨とし、民間企業での人事労務管理における実務経験をもとに、定年後は大学等で教鞭を執りつつ経営システムの研究に従事した奥田健二(1925-2009)。遺稿をまとめ、没後に刊行された本書は研究の集大成。

(文/山木和人 シグマ代表取締役社長)

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