Best Tomato Soup Ever 史上最高のスープ

Summer/2016

事がら海外出張の機会が多く、現地では会食となることもしばしばだが、時間が許せば一人で街に出て気の向いた店に入り、のんびり食事をすることを楽しみにしている。南アフリカ・ケープタウンに出張したときのこと。到着当日、ホテルにチェックインするともう夕食の時間だったので、コンシェルジュにお薦めのレストランを聞いたところ、街で有名な高級レストランをいくつか薦めてくれた。しかしこちらは一人ということもあり、我が儘を言わせてもらった。

「いや、もっとこじんまりとしていて、家族経営のレストランで、地元の人たちが行くようなレストランを教えてくれない?」。すると、「だったら、私がよく行くシーフード・レストランがホテルの裏から歩いて5分くらいのところにあるけど、そこで良いかしら?」と。

教えてもらったレストランは本当にコージーな雰囲気のレストランで、地元の老若男女で賑わっており、店員は最高の笑顔で迎えてくれた。飾り気の無い黒板のメニューに“Oyster”とあったのでとりあえずソーヴィニオン・ブランと牡蠣を頼んで、じっくりメニューを決めようと黒板を改めて見ると、“Best Tomato Soup Ever!(史上最高のトマトスープ!)”という面白いメニューを発見した。他にもカルパッチョやタコのソテー等魅力的なメニューがずらりと並んでいたが、思わずそれを注文した。あわせてアンコウのソテー等も注文したと記憶している。

実際このスープはその名に恥じない素晴らしいもので、心から楽しめたし、旅の良い思い出となった。が、あの素晴らしさは本当にスープの味だけだったのだろうか? 店員の笑顔や家族的なお店の雰囲気、そして作り手の気持ちまでもが伝わってくるような料理の数々。高級料理店では到底味わえない、大切な何かがあったように思う。

(文/山木和人 シグマ代表取締役社長)

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